質問・コメント:例えば、ウェルズのタコ型宇宙人とファーストコンタクトした際に、一体どの手(足?)で握手すれば良いのか?そもそも握手という行為が相手にとって意味があるかという事を考えていたので、(SF好きと見た)木村先生のお話は、面白く聞かせて頂きました。
回答
発表では言わなかったと思いますが,私は「挨拶」の本質は,その形がどうであれ,相手との関係にある規則性を作り上げることだ,と考えています。挨拶の多くが相称的な形を取るのはそのせいだと思われます。相手の形態が違っていれば,相称性を作り上げることが困難なので,挨拶の作り上げは難しくなるような気がします。(木村大治)
質問・コメント
スタートレックシリーズを見ていると、人類学をかじった身としては、色々と面白い気付きを感じていたところでもあり、人に人類学を説明する際に「まずはスタートレックを全て見ろ!!」等とも言っていたもので、この分科会は我が意を得たりの感が強いです。ファーストコンタクトがスムーズかどうかについては「う~ん??」と思いますが…ボーグみたいのもいるし。
回答
たしかに、「敵性宇宙人」というのは考えておかないといけないと思いました。ただ、私の主張の後半は、「相手が敵性だということがこちらによくわかっている」という意味での(一段上位の)理解はできるだろう、ということでした。(木村大治)
質問・コメント
①「コミュニケーションを理解するしない」という枠組み以外の”宇宙人”とのかかわり方があるのでは?共に存在するというあり方など(たとえば、人と植物のかかわり方など)。②「ファーストコンタクト」のために仮に準備をするならば、どのような”技術”が必要か?(たとえば、ロボットやバイオなど)
回答
①おっしゃるとおりだと思います。その場合、「理解する」という概念を拡張していく必要があるでしょう。②生身の人間が外宇宙で生存していくのはなかなか難しいことがだんだん明らかになってきています。そのばあい、ロボットなどのエージェントを飛ばすことを考えないといけないと思います。(木村大治)
質問・コメント
とても興味深いセッションでした。ありがとうございます。ただ、“人類”ということば、概念があまりにもナイーブに使われていたのではないか、と思います。スタート地点としては、いたし方ないかもしれませんが、”宇宙についての人類学”にとどまらず、”宇宙という視点”からの人類学も必要だと思いました。つまり、宇宙や地球という概念やイメージが今や具体化・現実化しているのならば、そのことによって、我々の生活全般にまで何が起こっているのか、という問題意識です。(最後の磯部氏の発表に触れられていましたが、人類学そのものからでてこなかったのは、若干残念でした) たとえば、人類という概念がさらに全面に出ることによって、その裏には危険性、暴力、ぎまん性、というもあるのではないか(ex. アメコミ『ウォッチメン』)。宇宙産業の問題は?そして、”他者”という問題も、こうした問題意識の上で考えていく必要があるのではないか?という等々、です。そして、木村氏の発表の中に、SF作家は学者より真剣に考えているという話がありましたが、多くのSFにおいても、宇宙という視点から人類を問い直すストーリーが語られていますが、その中にはより複雑なギロンがすでに重ねられていると思います。いろいろな意味で、今後も必要性がさらに増してくるテーマだと思いますので、ただ”人類”ということばに止まるのではない、あるいは”人類”という概念をかきみだし問い直す視座を獲得していってもらいたいと思います。
回答
最近刊行された(質問の時点から1年経ってしまいましたが…)、『宇宙人類学の挑戦』では、おっしゃるような問題意識である程度は議論が展開できたかと思います。さらに『宇宙人類学の展開』『宇宙人類学の逆襲』…といった続編を出していければと思っています。(木村大治)
質問・コメント
星新一のショートショートで、「時間感覚のちがい」がコミュニケーションのさまたげになっていたという話がありました。たしかに、生命は他者を認知する能力をそなえているのでしょうが、たとえば、一音素を発話するのに2年くらいかかる相手であると、対話はキビシイのではないでしょうか。
回答
形だけでなく、時間も大切というご指摘はそのとおりだと思います。そのショートショート,題名を教えてもらえないでしょうか。似たような短編を読んだ記憶があるので。クラークの『幼年期の終わり』にも、思考にものすごく時間のかかる結晶生物というのが登場します。(木村大治)
質問・コメント
宇宙ステーションでは何をして遊ぶのか、に関心があります。(宇宙と娯楽というテーマ)
回答
ISS「きぼう」での「宇宙芸術」という試みは、すでにJAXAでなされています。(木村大治)
質問・コメント
MARS ONEがメイフラワー号の現代版だとするとあるいは、イギリスからオーストラリアへの流刑の変形版だと考えると、植民先の先住民(火星人?)の権利を考える必要があるような気がしてきました。
回答
ブラッドベリ『火星年代記』は、まさに先住民問題の話ですね。(木村大治)
質問・コメント
あらゆる領域で、その力を発揮してきた人類学の分野にとって、宇宙への可能性というものは非常に魅力的なものに感じました。1点、質問があります。「宇宙へ行く」という行動に関して、今日は認知人類学の学問領域から、その方法論的翔子を示していただきましたが、他の学問領域での介入は出来うるのかどうかについて質問致します。
回答
もちろん、心理学や医学をはじめとして、人間にかかわるあらゆる学問分野が関われる問題だと思います。(木村大治)
質問・コメント
他者としての宇宙人として、なぜグロテスクなキャラクターがあつかわれるのかなどは宇宙人類学には関係無いのでしょうか。
回答
宇宙人の表象論は、魅力的なテーマだと思います。たしかにグロテスクなキャラクターは多いのですが、私はむしろ、それらが否応なしに、ある意味で「人間的」に描かれる傾向性が面白いと思っています。私はそれを「人間の汚染」と呼んでいます。(木村大治)

ここに記載されている質問・コメントは、日本文化人類学会第47回研究大会(2013年6月8日-9日)の分科会「宇宙人類学の挑戦:「宇宙」というフロンティアにおける人類学の可能性」の際に出されたものです。